「金融先進国であるアメリカでは」
「金融先進国であるアメリカでは」
世界で最も金融ビジネスが定着している国、アメリカ。アメリカではコロナ禍の影響もあり、ロビンフッド問題でも分かるように若者のネットトレーディングが盛り上がっています。しかし、対面取引もしっかりと定着しているのです。同時に富裕層ビジネス路線を堅調にしています。多くのアメリカ証券会社の対面取引では、扱うお客様を資産状況で区別しています。アメリカの証券会社は預かり資産に対してフィーが発生するケースが多い為、資産額と売上額が連動します。よって、ある大手証券では〇〇万ドル以下のお客様は取り扱い不可という基準を決めています。対面取引で取り扱うのは上位顧客だけ、基準未満のお客様はコールセンター(専任担当者はつかない)とネット。また、その基準未満のお客様はネットのみ。明確な取り扱い区分が決められています。
この顧客の選別を行い、ある証券会社の顧客数は半分になったと言います。反面、一顧客当たりの預かり資産は倍増し収益率は格段に上がりました。つまり営業員の時間をより優良なお客様に集中的に投下したという事です。その姿勢はお客様に評価され、お客様から預けて頂く資産額も倍増したという事です。これは対面取引の成功例でしょう。
アメリカと日本の証券会社の違い
アメリカと日本の証券会社の違い
最近、日本の証券会社でもお客様の絞り込みが明確になってきました。アメリカの証券会社同様に、日本も富裕層ビジネスに舵を切って行こうという意思がそこにあると思います。我が社も同様です。しかし、単にアメリカの真似をして顧客の選別をした所でそれは不十分です。何故か?日本の証券会社はアメリカの証券会社と比較して、圧倒的に転勤(担当者変更)が多いからです。いくらお客様の選別をしたとしても、担当者が数年単位で変わってしまっては意味がありません。数年ごとにせっかく築き上げたお客様との関係が寸断されてしまうからです。この点をどうするか?大きな問題です。
そもそも日本とアメリカの証券会社に何故このような違いがあるか?私が考えるに、アメリカの証券会社は「お客様を営業員に付与しない」という部分が大きいと思っています。アメリカの証券会社は中途採用が多く、営業員は自らお客様を開拓し、そのお客様で取引をします。つまり顧客は営業員帰属しているという事になります。よって会社の都合により転勤(担当者変更)を命じる事など出来ないのです。対して日本の証券会社の場合、自己開拓の割合は極めて低く、営業員は会社が持つお客様を担当する事になります。よって営業員同士のバランスや支店のバランスなどを保つために定期的に転勤(担当者変更)を行うのです。これを聞いて驚かれる方も多いと思いますが、日本の場合、実際に営業員自身が開拓した大口のお客様の割合は非常に少ないのです。つまり大半が会社に帰属するお客様であるという事です。これでは対面取引としての強みは発揮できません。